2019年1月17日木曜日

中小企業診断士ストレート合格の勉強法メモ

おかげさまで平成30年度中小企業診断士試験、1次・2次ストレートで合格できました。

診断士試験は、受験者の年齢や属性が様々だったり、2次試験に関しては採点基準が不明で、誰にでも適用可能な学習方法のベストプラクティスが無いなど、国家試験の中でもかなり特殊な部類に入るように思います。

そのため、私の経験がどの程度これを読んで下さっている方々の参考になるのかはわからないのですが、これも一つの例ということで、私の場合はどのような学習を行ってきたかをまとめておこうと思います。
(2019-01-17 更新)


1. 私のプロフィール

上にも書いたとおり、診断士に合格するまでの学習法や学習量は、その人の知識や経験に大きく左右されると思いますので、以下のまとめを書くにあたり、まずは私のプロフィールをまとめておこうと思います。
ただ、公開されている受験者の年齢や職業などの統計を参照するに、私と似たプロフィールの方はそれなりに多そうなので、そうした方々には参考になる部分もあるかもしれません。
  • 40代後半、静岡県内の1部上場の製造業に勤務しています。転職経験無し。
  • 専門はソフトウェアエンジニアですが、大企業のエンジニアによくあるように、30代以降はほぼ自分でソフトウェアを書くことは無く、マネジメントや商品企画、技術戦略立案、新事業提案などの業務を行ってきました。
  • 所属している会社の層別研修の中で、診断士試験に直結しそうなマネジメント研修をそれなりに受けています。慶應や一橋のビジネススクールにがっつり通った(通わされた)経験があります。
  • 得意科目は運営管理、情報システムあたり。全く勉強しない状態で合格点である6割はとれる自信がありました。これらの点数を8割・9割に引き上げて得点源にすることを心掛けました。
  • 企業経営理論、経済学・経済政策、経営法務、あたりは、分野によっては知識はあるものの、診断士試験独特の分野や言葉の使い方などに自分の知識や経験を合わせこむ必要がありました。
  • 財務・会計や中小政策はほぼ素人状態。暗記が苦手なので中小政策は最後まで苦労しました。
  • 国語力はそこそこある方だと思います。おかげで、2次の事例1〜3はそんなに苦労せずに内容を理解することができたと思います。もちろん、それでも合格レベルの回答を書けるようになるのは大分苦労しましたが…。

2. 試験結果

1次試験は465点(得点率 66.4%)。
2次試験は事例1:66点、事例2:62点、事例3:66点、事例4:70点、合計264点(得点率 66.0%)でした。
そんなに優秀な成績、というわけでもなく、後から振り返ってみると結構ぎりぎりな感じです。

中小企業診断士合格までの記録: 試験結果の開示請求結果が届きました


3. 学習時間

以下、合格までの学習時間のグラフです。エクセルで学習計画と学習実績を管理するようにしていましたので、ほぼ正確な数字だと思います。


学習時間には、机に向かっている時間だけで無く、通勤時間(車で往復1時間程度)にカーステレオで通勤講座の音声を聞いていた時間も含んでいます。


上記は月別の学習時間。青が計画、赤が実績です。

11月・12月あたりは身内に不幸があったこともあり、ほとんど勉強できませんでした。加えて、ちょうど苦手な財務・会計の学習期間に重なり、全く成長している手応えを得られず諦めようかと思ったこともありました。
年明け、もうちょっと頑張ってみようと、財務・会計を一旦とばして得意な情報システムあたりから勉強を再開したのが良かったかと思います。諦めずに勉強を続けるのが大切だと思います。

7月(1次直前期)は気合い入れました。朝は5時頃起きて出社までの3時間、夜は夕食後寝るまで2時間、あわせて一日平均5時間くらいは勉強していました。1次はそれなりに暗記物が多いので、直前にペースを上げて一気に合格レベルに持っていくのは良い戦略だったと思います。



累計の学習時間は上記の通り。こちらも青が計画、赤が実績です。
学習時間のトータルは約720時間。やはり2017年秋〜冬の不勉強が原因で当初計画していた学習時間には届きませんでしたが、結果的にはこれで受かったので良しとします。


4. 1次学習方法

1次は基本的に通勤講座のみ。途中、他社の参考書も何冊か購入しましたが、ほとんど使用しませんでした。


通勤講座の良いところは、自分のペースで学習を進められるところだと思います。

まず、科目毎の時間配分を自由に設定できます。既に予備知識のある科目については、講義をスキップし学習マップの確認のみですぐに問題集に取りかかり、予備知識の無い科目に関しては、自宅でじっくり時間をかけて映像の講義を受講する、などの使い分けができます。
加えて各科目の1コマの講義の中でも、途中でよくわからない項目があった場合、一旦映像を停止して自分の納得のいくまで時間をかけて調べたりノートを作ることができ、効率的に理解を深めることができます。

学習中理解できない項目が出てきたときは、Webで納得いくまで調べるのが良いと思います。Web上には良質のコンテンツがたくさんあります。
Evernote に科目毎のノートを作り、調べた内容を都度コピペしてまとめていくことで理解を深めていきました。

基本的には PC ベースで紙やペンを使わずに学習していましたが、財務のみ、問題をプリントアウトして書き込みながらひたすら解きました。計算問題は実際に手で書いて体で覚えるしかないと思います。

あと、直前期には、音声講座から「記憶フラッシュ」という問題部分のみを抜き出してプレイリストを作り、カーステレオでランダム再生してトレーニングしたりしていました。


5. 2次学習法

2次の学習を開始したのは1次試験後1週間くらいたってから。

いきなり過去問には手を出さず、まずは2次に必要な基礎知識・基礎テクニックを身につけることに集中しました。
下の方でも書きますが、過去問は貴重な練習試合の題材なので、実力が無いうちに手をつけてしまうと直前に勉強できることが限定されてしまいます。
特に、事例4は基本的な計算ができるようになってから過去問に取り組むのが良いと思います。

2次の学習に使った参考書は以下です。

事例4の計算問題はできるまでひたすら解くのみ。1次の財務・会計と同じく、手を動かして体で覚えるしかありません。1冊の問題集を3回くらいやるうちに大体解けるようになりました。

過去問演習は、如何に与件に出てくる社長さんに寄り添って提案できるか、を心掛けるようにしました。
そういう意味では、参考書の中でも、「事例問題攻略マスター <https://amzn.to/2R2u8hO>」の解説が自分には一番しっくりきました。
参考書の中には、テクニック重視になりすぎて社長さんに対する提案になっていないように感じられるものもあり、そのような回答はあまり参考にしないようにしていました。

2次も直前期にペースを上げ、毎日1事例、過去問を解くことをノルマに勉強しました。
朝、仕事前に1時間程度で過去問を解き、夜帰宅してから上記全ての参考書の解説を読んで、4時間程度かけて自己採点・反省する、の繰り返しです。

同じ事例を繰り返して何度もやり直すことはしませんでした。一度解いたことのある問題をもう一度解いても、あまり意味が無いと思います。


6. 模試の活用について

できるだけたくさん、会場受験で受けるべきと思います。
私が模試に期待した目的は以下の3つでした。
  • マイルストーンに設定することで学習のモチベーションを高める
    • → 診断士試験はおよそ1年間にわたる長い学習期間が必要になりますので、何らかの目標が無いとどうしてもだれてしまいます。途中に模試を受けることで学習のモチベーションを上げるようにしました。
  • 前後の移動など含めて、試験当日の時間の使い方を確認する
    • → 大抵の模試は本番の試験と同じタイムテーブルで行われることが多いと思います。トイレのタイミング・食事の取り方・休憩時間の過ごし方、など、事前に確認しておけると本番の試験を落ち着いて受けることができると思います。
  • 模試の受験と復習自体が密度の濃い勉強になる
    • → 模試の間は強制的に最高レベルの集中力で頭を使うことになるので、その時間自体がとても重要な学習時間になります。休日はどうしてもだらけがちになってしまうと思いますが、その休日を強制的に集中して学習する時間に当てることができるのは、特に自分のような意志の弱い人間にとっては大きいです。

1次は LEC・TAC それぞれ1回の合計2回、2次は LEC・TAC あわせて3回受験しました。
いずれも成績は散々でしたが、合格判定の内容はあまり気にしなくて良いと思いました。模試と本番とでは、問題のレベルも採点基準もかなりズレがありように思います。
例えば、本番の試験では、A:ほぼ全員出来る問題、B:合否を分ける問題、C: 誰も出来ない問題、がバランス良く配置されていますが、模試だとどうしてもBとCが中心になる傾向があるようです。
(当然ながら、本番ではAをきちんと取ることが一番重要です。)



7. 参考になる各種メディア

資格校や出版社が提供している教材以外にも、無料で入手でき、かつ診断士になった後も役にたつコンテンツがいくつかありますので、ここでまとめておきます。
学習の息抜きにも良いと思います。

  • 中小企業白書
    • 全部読む必要は無いと思いますが、時間のあるときに目を通すようにすると、知識の整理にもなるしモチベーションアップにもつながるかと思います。
    • 以下のリンクから無料でダウンロードできます。
  • 中小機構の YouTube チャンネル
  • テレビ番組
    • あまり知られていないですが、中小機構が制作に協力しているテレビ番組があります。直接試験に役立つかどうかは不明ですが、もしかしたら来年の2次試験の事例になるような会社が含まれている…かもしれません。
    • 試験には影響しなくても、これから診断士になろうとしている人にはきっと面白い番組だと思います。
    • 各地域での放送スケジュールなどは以下のリンクから。


8. 瞬発力

今回、運良く1年目でストレート合格できたわけですが、今振り返ってみると、直前期に集中して頑張ったことが合格できた一番の要因だったように思います。

さすがに最近は年齢的にも暗記の定着が悪く、例えば3ヶ月前に覚えた内容などは結構な割合で忘れてしまっています。
もちろん、その都度復習することで暗記内容が定着していくことは理解しているのですが、一番効率的なのは「試験の直前に覚えて、忘れないうちに試験を迎える」という戦略かと思います。

以下、「その時点における、試験に合格できると思う確率の自己認識」を思い出しながらグラフにしたものです。
100%を超えていたら、「今なら多分合格できるのは」と思っていた、ということを表しています。
例えば、2017年9月なら、その時点では1次の合格確率は30%程度、2次の合格確率は60%くらい、と自己認識していた事になります。


要は、このピークをちょうど本番の試験に持ってくることができれば合格に近づくのではないかと考えました。
もちろん、ピークをずっと維持できる方なら、早めにピークを上げてそのまま100%を超える状態で維持していけば良いのですが、なかなかそれだけの学習時間を継続して確保するのは難しい。

加えて、2次試験に関しては、早めに過去問をやり切ってしまうと直前にやることが無くなってしまうという問題もあります。一度解いてしまった過去問は内容がわかってしまっているので、本番の試験のように、初見の問題に対して限られた時間で内容を理解し回答を作る、という練習には使えません。
そういう意味では、実は1年目が一番合格しやすいのかもしれません。

結果、自分なりのピークを意識して、1次試験・2次試験の直前にできるだけたくさんの時間を取るようにしたのが良かったと思います。

ちなみにですが、上のグラフにあるとおり、現時点(2018年12月)での合格確率は1次70%、2次90%程度かと。細かいところはもう忘れてしまっているので、今1次試験受けても多分受かりません…


9. 文房具

いろいろ試行錯誤した結果、最終的に試験で使用したものをメモしておきます。



10. 最後に

今振り返ってみて、この、ヒリヒリするような実力勝負の世界に1年間身をおけたのは貴重な経験でした。普段の生活の中でこうしたプレッシャーのかかる状況になることは無くなってきてしまっていたので、楽しかったです。

特に、「勝ち残れるのはたったの4%」「年齢や性別、会社の名前など一切関係ない、受験番号のみで判断される実力勝負の世界」といったあたりがとてもかっこいいと思っています。

試験結果の開示請求結果が届きました



昨年末に送っておいた得点の開示請求結果が届きました。
1次は点数わかってましたが、せっかくなので1次・2次まとめて請求。

  • 1次試験
    • 総得点 465点(得点率66.4%、自己採点どおり)
  • 2次試験 合計 264点(得点率 66.0%)
    • 事例1: 66点(A)
    • 事例2: 62点(A)
    • 事例3: 66点(A)
    • 事例4: 70点(A)

2次試験は一応全部60点クリア。ちなみに今回物議を醸した事例4が一番点数高くて70点でした。
事例1や事例3などはもうちょっと自信あったんですが(80点くらいとれてるんじゃないかと思ってました)、結構ぎりぎりな感じでした。危なかった…